FC2ブログ

祈りの花 1

<運命の皇子の側近(理性攻)×先見の青年(一途健気受)>
あらすじ…独裁者に何年も捕らわれていた【先見】の青年は、自分を救い出してくれる銀髪の人物が来てくれる未来だけを頼りに過ごしていた。




<祈りの花 1>


 大陸ナガール。
 天の石と海の石と呼ばれる二つの石の力により生まれた大陸。
 海の石は常に大陸の中央に。天の石は海の石の周囲の土地を意志があるかのごとく移動していた。
 天の石が動く度、その地には様々な生物や食物が育っていった。中でも少しづつ知恵を付けた人間達によって三つの国が出来上がる。そして、知恵を付け過ぎた人間はある事に気づいた。
 天の石がある国が栄えることに。
 そして、始まった石を巡る戦い。
 それがどれ程愚かな事かを知りもせず。
 二つの石は互いに波動を出しており、定めと違う場所に在れば力の波動が乱れてしまうのだ。
 その事に気づかず天の石という名の覇権を掛けた争いは長い年月に渡り繰り広げられ、その時代の勝者が石を手にし、石の恩恵である豊かな国を手にしていた。
 しかし、波動の乱れは限界に来ていた。
 天の石が定めを外れてから五百年目――大陸最大の天災が起きた。
 三つの国に連なる山脈――その頂点を極める山が火を噴いたのだ。
 噴煙は天を覆い、陽の光を遮断した光景はまるでこの世の終わりを告げるかのようだった。
 その時、今まで何度も人間が入り込み、生きて戻れなかったと言われる、海の石があるという樹海から、大陸では見たこともない黒髪の青年が姿を現した。
 青年は近くの役人に告げた。
『三人の王を集めよ』と。
 その樹海は今もなお、噴煙を上げている山の麓にある。しかし、その森の緑はまったく枯れることなくそこに在った。その異様な光景を部下から報告された王達は青年の話に耳を傾けるつもりになったようだ。ひとまず休戦の約束を交わし、青年が指示した森の前に流れる川に集った。
 先に現れたのは、大陸の北を治める赤い髪の王。
 二番目に現れたのは南を治める金の髪の王。
 最後に現れたのは森を背にする中央を治める銀の髪の王。
 集まった三人の王を前に静かに青年が告げた真実。
『二つの石は互いに波動を出しており、定めと違う場所に在れば力の波動が乱れてしまう』
 自分達が争ってきた事が大陸を沈めることになるやもしれぬ。その真実をにわかには信じられなかった王達だったが、目の前に広がる噴煙と、まったく別世界の海の石に護られた森の光景を見比べ、藁にも縋る思いになる。
『どうすれば大陸を鎮められる』
 銀の髪の王が問いかけた。
 青年は細く息を吐き――ひとつの解決策を口にした。
『私の申し上げる場所に天の石を配置してください。私亡き後は力を継いだ者の示す場所に。あなた方の祖先が狂わせた五百年と同じ年月を掛けて、狂った波動を戻す為に』
『そなたの言葉の信憑性――それの根拠はなんだ?』
 青年が話した石の話が真実だとしても、青年やその子孫の指示に従うのは何故だ、と金の髪の王が問いかける。
 しばしの沈黙の後、青年は告げた。
 青年の一族は海の石の色を貰い、蒼の一族と名乗った。
 何故、海の石を置く森に住んでいるのか、いや、住むことが出来たのか。それは一族のある力によってこの地に辿り着いたからだというのだ。
 その力とは――未来を先見する力。
『私の祖先はこの現実を五百年以上前に先見していた。そして、唯一無事だったこの樹海と呼ばれるようになる土地を探し出し、そこで海の石を見つけたのだ』と。
 海の石は初めて意志を持った生物に触れられたことによってその者と契約を交わしたのだ。
 この土地に住む代わりに石を外界から守ってくれ。と。
 その契約通り、一族は土地に足を踏み入れる者が石に辿りつけぬように木々を植え続けた。長い年月を掛け植えられた木々は迷路のように育ち、入ったが最後、生きて戻れぬ樹海になった。しかし、海の石は生物の命を奪うことは望んでいなかった。その為、運良く樹海の最奥、一族の暮らす村まで辿り着けた者には海の石の意志を伝え仲間になるよう諭した。最奥に辿り着くまでに生死の境を何度も彷徨った者達は、欲など捨て生きていくことに頷いた。そして、中には一族の女性と心を通わせ子孫を残す者もいた。だからこそ、一族が途絶えることなく現代までその血を残すことが出来たとも言える。
 そんな外界とは自らは接触を絶っている蒼の一族が何故、姿を見せたのか――
『しかし、このままでは大陸が沈んでしまう。それは我の祖先の望んだことではない』
『――だが、先見という力で石の定められた位置が分かるのか?』
 未来が見えることと、石の波動を感じることは別物ではないのか? と銀の髪の王が問う。
『天の石は本来、その時代に栄えさせたい土地に移動してきた、と祖先が記した書にあった。ならば、先見の力でどの地が栄えるかを先見すれば、天の石が置かれるに相応しい土地が分かる筈』
 青年の言葉に王達は考える。
 確かに、ここ何代かは天の石があるからといってその国が栄えたわけではなかった。逆に日照りが続いたり、豪雨が多かったりしたことも多い。
『天の石は定めと違う場所に在れば、強い力故、栄えとは真逆の効果を発揮する場合もあるそうです』
 青年のこの言葉が王達に野心を捨てさせた。
 大陸が沈む――それでは天の石を、覇権を手にしても意味がないからだ。
『人が関与出来る範囲を見誤ってはならぬ』
 赤の髪の王が口にすると懐に手を入れ、赤く光っている石――天の石を青年に委ねた。
 青年は恭しく天の石を手にすると、逆側の手を懐に入れ――青い、海の石だと一目で分かる石を取り出した。
 瞬間、石は互いの波動を感じ取ったかのように光り、辺りは一瞬にして眩い光に覆われ――世界の終りを告げるかのようだった噴火は鎮まり、天空を覆っていた噴煙は霧散した。その光景に、王達は僅かに残っていた覇権への野心を捨て、まずは大陸の平常をと互いに協力し合うことを約束した。
 それから数百年、先見によって正しい位置に天の石が置かれ、大陸に再び豊かな土地が増えていった。
 だが、言い伝えは年数が経つにつれ間違って伝わる。
 蒼の一族『先見』を手にしたものが天の石を手に出来る。
――覇権握ることが出来る、と。
 蒼の一族はそれを先見すると樹海を出て、長が海の石を持ち散り散りになった。
 しかし、黒髪を持つ一族という特徴から、捕らわれてしまう者も居た。
 先見は本来いくつにも枝分かれした未来の中から定めが決まった時間を【見る】。だが、捕らわれた者の中の意志の弱い先見は拷問にかけられたり、金銭に目が眩んだりし、命じた王の国に天の石が来るよう、未来の糸を手繰り寄せた。それこそが蒼の一族の一番の力だった。しかし、先見達も知らなかったのだ。自らの意志で未来を選んだ時、その代償が自分の身に起きることを。
 先見本人の意志で未来を選んだ時、先見の身体に異変が起きる。ある者は痣が浮かび上がりそこから酷い痛みが発し腐っていく。ある者は病に侵され短命に終わる。それが幾人もの先見に起きた場合、どうなるか――。
 先見の――蒼の一族は急速に人数を減らしていき、先見の存在が確認出来なくなっていた。
 もちろん、各国の王達は蒼の一族を血眼になって探した。しかし、生き残った先見の力を持つ人間の方が上をいくのか、その血が途絶えたのか。この二百年、蒼の一族の行方は依然知れず、先見の存在自体が言い伝えの域に達していた。
 そして、再び始まった覇権と天の石を巡る争い。
 しかし、大陸に大きな災害が起きていないということは海の石を移動させ、波動を保っているのかもしれないと言い伝えを知る老人達は思っていた。
 そして、とうとう大陸はある王によって百年前、統一された。
 しかし――天下が続き力が大きくなった三代目の統一王は独裁者になった。
 王の住む王都は豊かだが、その豊かさを保つため、地方では納税や年貢がかなりきつく、民達は日々生きていくことがやっとだった。
 そんな世で、いつしか民は救世主を待つようになる。
 そして、口伝えで広まる『伝説』。
 独裁者現れる時、天の神が制裁を下す天子『運命の皇子』(うんめいのみこ)を降ろされる。その皇子、海の石を手に独裁者を倒す、と。
 その『伝説』は今や大陸全土に広まっていた。


  ◇◇◇


 豪華な寝室には、覇王と呼ばれる現在『王』を名乗るただ一人の者――ウダールが、その地位に相応しい逞しい身体を白い艶めかしい身体に覆いかぶせていた。
 ウダールの下で陶器のような肌を露わにし、金髪の王の背中に腕を回す者はこの大陸ではある一族にしかないと言われる黒い髪を擁していた。そう、蒼の一族の子孫だ。
「で――運命の皇子の正体は分かったのか?」
「申し訳ありません、皇子は……ですが側近になる子供はおそらくファントの領主に関わる子供ではないかと。あの地域はかつて樹海があった場所」
「お前の祖先の故郷というわけか」
「……私には多少の占いの力しかありませんが」
「謙遜するな。お前の占いで私は天下を守れている」
「それは王のお力。ですが、もし占いを信じていただけるのでしたら……蒼の一族の生き残りをお探しください」
「お前以外に生きているのか?」
「……伝説は民が苦し紛れに作り出したものではありません。実際、蒼の一族に言い伝えられてきたこと」
「それは真か」
「はい。これが広がり始めているということは、蒼の一族の生き残りがいるということです。そして、かならず運命の皇子に接触し海の石と天の石を正しい場所に置こうとするはず。そうなれば、狂った波動を正そうと石の力がこの都を消滅させる可能性があります」
「――させるわけにはいかんな。……では、狩り出すか」
 独裁者の一言で幾人もの子供たちの運命が狂い出す。
 その日から一斉に濃い髪色――黒髪でなく、ただ茶の濃い髪色だというだけで捕らわれ折檻され、蒼の一族であるかを問われた。
 そう簡単に蒼の一族が見つかると思っていない王だったがこれは見せしめ――いや、あぶり出しでもあった。
 その日から半年。常に王の傍らに佇む占い師――サークが水晶を見ながら口にした。
「出て参りましたぞ。まだ幼いですが……北の谷に向かっております。母親と思わしき女…黒髪ではないので、おそらく先見は出来ないかと。子供も母の血が濃いのか、黒髪は一部にしか擁しておりませんのでどの程度の力かは分かりかねますが……利用されまいと自害した父が黒髪を擁していた故、血を受け継いでいる可能性は高いかと」
 かなり薄まった血で先見の力がどの程度あるかは分からない。占い師――サークも灰色がかった黒髪で占い師としては優秀だが、先見の力としては微力だった。
 そのサークでさえ、ウダールの天下統一の維持に必要不可欠だった。
 これが先見の力が強ければ――
 ウダールは鋭い声で告げる。
「地図を持て」
 素早く側に控えていた宰相が縦長の大陸の地図をテーブルの上に広げた。
「母は殺してもかまわん。子供は生かして必ず捕えろ」
 王の命は馬を乗り潰し、三日で北の地を治める部下に届く。
「北の谷か。また面倒な場所に潜みよって」
 荒れ果てた大地に長く滞在している男は、ニヤリと嗤う。
「まあ、狩りを楽しませてもらうか」
 そして、水晶に映った親子の運命が決まった。


| 2018.10 |
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
プロフィール

桜崎彩世

Author:桜崎彩世
FC2ブログへようこそ!

web拍手

最新記事

カテゴリ

月別アーカイブ

FC2カウンター

リンク

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

ページトップへ